2019.08.11 Sunday 10:05

ひよこ

2005年に放送されたテレビドラマ「優しい時間」が好きでした。

 

 

寺尾聡さん演じる喫茶店のマスターが素敵で

多くを語らず、さりげなくて、かっこよかった。

あんなマスターに、あんな大人になりたいなあと思いました。

 

 

マスターは交通事故で奥さん(役、大竹しのぶさん)を亡くします。

喫茶店「森の時計」には毎日いろいろな人が訪れては

それぞれのドラマが繰り広げられていきます。

 

 

夜、喫茶店の営業時間が終わるとマスターはコーヒーを二杯淹れます。

そうするとカウンターの端っこの席に

亡くなった奥さん(大竹しのぶさん)の姿が現れるのです。

そしてコーヒーを飲みながら

その日あった出来事を二人でゆっくり振り返る。

そんな 心が温かくなる 優しいドラマでした。

 

 

 

 

 

 

僕と妻はカフェ開業を夢見ていました。ちょうど2005年頃から。

たくさんのカフェを巡り、参考にして、メニューも考えながら

具体的な理想のイメージを作り上げていきました。

 

 

ある日「道明寺天満宮手づくりの市」と出会いました。

僕らはすぐに出展申し込みをしました。

妻はパンを焼いていました。

僕らはパン屋になるつもりはなかったけど

パンでイベント出展し、それを足がかりにして

将来のカフェ開業へつなげようと思ったのです。

 

 

そうして実店舗を持たない自家製天然酵母食パンの店

「ひよこベーカリー」がスタート。2010年のことでした。

 

 

道明寺天満宮手づくりの市にも数回出展、

順調に活動を続けて、多くの人に知っていただけるようになり

来年こそは本当の夢「カフェ」に向かって

踏み出そうと決めていました。

そんな矢先、妻に病が見つかりました。2011年12月。

 

 

病はあっという間にひろがって妻から体力を奪い

夢を奪い、

最後には 命を奪い、

どこかへ去っていきました。

妻はもう眠りから覚めることはありませんでした。

2012年8月4日。

 

 

それから僕はたくさんの人たちに助けられ、励まされ、

数えきれない偶然や奇跡のなかで

大阪府八尾市に小さな小さな店を持つことが出来ました。

「ひよこ珈琲」2013年12月3日オープン。

それから5年8カ月後の

2019年7月28日に閉店しました。

 

 


 

 

 

妻は闘病中、とてもつらい治療を続けて受けていました。

僕は病室で何度も、何度も妻を励ましました。

 

 

「病気が良くなったら、また二人でカフェの計画を進めような。

 カフェは二人でやるんやからね」

妻は言いました。

「ううん、一人でやって。一人ででもやってほしい」

妻は僕にドラマ「優しい時間」の あの寺尾聡さんみたいな

マスターになってほしいと言うのです。

 

 

「そしたらわたし、大竹しのぶさんみたいになって

 カウンター席にすわるから」

 

 

 

 

 

 

ひよこ珈琲のカウンター席

そこに妻の姿は

僕には一度も見えなかったけれど

 

 

この店全体を

いつも見守ってくれていたように思います。

 

 

その温かさをずっと感じていました。

 

 

 

 

 

 

また明日。

 

 

そう言い始めたのは妻が入院中のとき。

面会時間ぎりぎりまで病室にいた僕が帰る時

とてもさみしそうな顔をした妻に言いました。

「明日も会社帰りに来るから」

「うん、わかった。。また明日」

「じゃ、また明日」

 

 

その後、妻が一時帰宅しました。

僕は夜がとても不安でした。

妻もそうだったと思います。

夜、寝ている間になにかあったらどうしよう。

朝起きて、もしも妻が、、、そう考えると

怖くてたまらなかった。

 

 

いつか自然と僕たちは

夜「おやすみ」と言う代わりに

「また明日」と言いあうようになりました。

明日がちゃんと二人にやってきますように。

それは祈りのような言葉でした。

 

 

そして朝を迎えたとき、

隣で寝ていた妻と一緒に目を覚ましたときの安堵感。

それまで当たり前にくると思っていた「明日」。

当たり前なんかじゃない。

その「明日」がやってくることの喜び。

静かにあふれる感謝の気持ち。

 

 

だから僕らは 何よりも

「今日」を「今」を

大切にしなくては。

そんなことに気づいた二人。

 

 

そのことを 

なさけないほどバカな僕は

時々忘れそうになるので

ずっと忘れないようにと書いてきたのです。

 

 

「また明日」

 

 

これからもずっと。

 

 

決して 忘れないように。

 

 

 


 

 

 

さてさて

 

 

そろそろ

 

 

終わりの時です。

 

 

 

なんだかずーっと

長い長いドラマのなかに居たみたい。

でも、楽しかったー。

 

 

 

 

 

 

 

それでは ひよこの物語も

ここで終わります。

 

 

 

皆さまと出会えてほんとうに幸せでした。

ありがとうございました!

 

 

 

またいつか、どこかで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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